発端 <7月1日>

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 ――○○署管内において、変死体が発見された。××線の△△駅と▲▲駅の間の線路脇の車が一台やっと通れるくらいの道だった。日中は人の往来が幾等か有るものの、夜は全くと言って良い程人通りの無い道。発見者は、本当に偶々通りかかっただけだった。  通報時刻は、21時47分だった。  発見者は、A氏とその妻B子さん。A氏が1駅乗り過ごし、午後9時を回っていたので、電車にまた乗り直すのも面倒で、家に居た妻のB子さんが迎えに行った帰り道の事だった。  B子さんは、1人で迎えに行く事が怖かった為に、行きは、多少の回り道では有るものの街灯やコンビニの電気等が見える明るい道を通り、帰り道は夫のA氏と一緒ということも有り、近道となる線路脇の道を通るべく走らせていた。  その時に、変死体を発見したので有る。  A氏とB子さんの話に寄れば、道の真ん中に仰向けに寝転んでいた為、てっきり泥酔し、道の上で寝てしまったのだろう。と思ったと言う。そこで、助手席に座っていたA氏が、仕方ない。と車から降りて、その人物へ向かって行き、声を掛けながら体を揺すった。B子さんは、車のライトが顔に当たれば、眩しさで目を覚ますかもしれない、と思い、車を近付けて顔にライトが当たる位置で止まったという。  そして、A氏は、声にならない声を上げて、運転席の窓を叩いた。B子さんにも、はっきりと見えて顔色を変える。B子さんも車から降りると、夫のA氏と手を取り合い、慌てふためいた。  お互いを落ち着かせ合うと、警察に連絡をする事になる。この通報が21時47分だった。  年齢30代~40代の男性。胸から血を流して見るからに絶命していた。発見者の2人は、面識は無い。所持品を探った警察は、免許証を見つけた。  大沼 大輔  それが、被害者の名前だった。年齢は37歳。住所は東京都――区――。○○署管内の住人では無く、ましてや××線の△△駅も▲▲駅も関係ない住所。勤め先がどちらかの駅が最寄り駅となるのか。とにかく、○○署の署長は対策本部を設置し、報告を受けた後、捜査員を大沼の家へ派遣した。
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