クラス対抗訓練

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 八月一日 静岡県富士山麓。  土曜日、1500時。私立東都防衛学院中等部二年二組、眞柴想一は森の中を走っていた。  前には眞柴より背が高く、がっしりとした少年が走る。後ろからなので、よく見えないが、八十九式自動小銃を片手に、もう一方の手で顔のあたりをさすっていた。恐らく汗でずり落ちた黒縁眼鏡をかけなおしているのだろう。  天気は曇り。太陽が出ていないので幾分マシであるものの、このまとわりつくような暑さにはいまだに慣れないと眞柴は胸中で呟いた。それも午前中降り続いた雨のせいだ。今のところ止んではいるものの、夜にはまた降り出すらしい。特に長太郎にはきついのだろう。長太郎の出身は新潟の雨が多い街である。そのため長太郎はとかく雨には慣れているらしいのだが、如何せんこのうだるような暑さには全く慣れないと以前悪態をついていた。最も眞柴にとっては新潟のように、身も凍る寒さに雨が加わった方がつらいと思わないでもないが。  
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