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「いらっしゃいませ。本当に来てくれたんだね」
土曜日に男が一人でカフェだなんて、況してやここはスタバじゃあるまいし、慣れないな、なんて思いながらドアを押すと、白い壁とアンティーク調の洒落たカフェだった。
ハルは黒いシャツにスキニーのパンツを穿いていて、メニューを片手に携えるとそのままカウンターの席に僕を誘導した。
「来るよ、昨日メールしただろう」
「うん、ありがとう」
彼女は口角を上げて目を細くした。
笑顔もすこし似てる。
「なににする?」
「ラテで」
「ホット?アイス?」
「ホット」
ハルは伝票に注文を書き付けるとカウンターに戻っていった。
髪の毛はもう少し切って。メイクは薄く。そうしたら、姉だ。
なんてカウンターの向こうを見つめながら思って、は、と息をつく。別に姉と重ねてそう見ているわけではない。ただ、似ているから、つい、そうしてしまうだけ。
そう自分に言い聞かせながら、うつ向いた。
ハルは可愛い。それでいて大人っぽくて、笑顔の向こうになにを考えているのか分からない。それが、いい。
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