ひとつめ

5/14
前へ
/45ページ
次へ
『パスワードヲ入力シテクダサイ』 坂を登りきった春に第二の壁が立ちはだかった。 校門にあたる場所で春は足止めを食らっていた。 桜ヶ丘高等学校はその特異性より内部の機密を外部から探りを入れられることがしばしばあるためセキュリティーは厳重である。 春のように時間外の入校に対しては声紋、掌紋、網膜といった生体認証セキュリティーに加え固有のパスワードを入力する必要がある。 または内部より来訪者を確認し、中に入れることも可能である。 不幸なことに、生徒固有のパスワードは入学式後に配られることになっており春が知るはずもない。 『パスワードヲ入力シテクダサイ』 機械音声が虚しく響く。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加