ひとつめ

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「こうなったら塀を乗り越えていくしか……」 桜ヶ丘高等学校は敷地の周囲を2mほどの高さの煉瓦造りの壁で囲まれている。 背の低い春であっても跳べば何とか越えれそうな高さである。 「よし、急ごう」 春は背負っていた鞄を肩から外し、塀の向こう側へ投げた。荷物を背負っていては跳びにくいと判断したためである。 バチィッ!!! しかし鞄は塀を越えることなく、空中で燃えてしまった。 「えっ?」 春は唖然とする。空中で鞄が燃え、そして足元へ落下してきた。 それと、同時にけたましい警報が鳴り響いた。 『侵入者、侵入者、校門ニ侵入者発見』 春の顔から血の気が引く。遅刻した挙げ句荷物を燃やされ、そして不審者扱いをされもう未来はない、そう一瞬にして悟った。 『侵入者、シンニュガガガッ』 しかしその警報はすぐに鳴り止んだ。 「そこでなにをしているのだ」
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