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「…………はぁ、ここもねぇな。ちょっくら店員にでも聞いてみっかな……」
レジに向かい、店員に話しかける。
「あの~、すみません。昨日発売した『デジタルオンライン』の新巻は置いてありますか?」
店員は少々お待ちくださいと言って、手馴れた手つきでパソコンを操作し始めた。
五分も掛からないうちに作業を終わらせた店員がこっちを見た。
「残念ですが、お客様がご希望する商品の在庫がございません」
「そうですか……」
がっくり肩を落とした俺は店員に一礼をして、この場を立ち去ろうとしたが――。
「えーと、ちょっとよろしいですか?」
突然店員に呼び止められた俺は、ふと足を止めた。
「はい?」
「少々時間は掛かりますが、取り寄せということもできますが、いかがいたしますか?」
「それじゃあ~、お願いします」
かしこまりました。と店員は返事をした後、どこかの書店に問い合わせてくれた。
在庫確認にそれなりに時間を要したが、結果在庫があったようだったので頼むことにした。
その帰り、上機嫌の俺は偶然にも結菜が一人で帰っているのを発見した。何の迷いもなく彼女の元へ走り寄った。
おーい、と呼び掛けると結菜はこちらの存在に気づき、少し驚いた様子をみせた。
「あっ……慶汰、どうしたのこんな所で?」
「そう言う結菜もどうしたんだよ」
「ちょっとね……。そんで慶太は?」
「そこの書店に寄った帰りだ」
「探してたのはあった?」
「まぁな、でも在庫が無かったから、取り寄せてもらうことにした」
「だからそんなに上機嫌なのね」
「おう!」
俺は何かを思い出し、あっ、と声が漏れた。
「どうしたの?」
「部活の時に話した娘のこと覚えてる?」
「そりゃあもちろん! ……で、それがどうしたの?」
「明日もう一度、勧誘しようと思うんだけど……結菜も一緒に来てくれないかな~っと思ってな」
「いいよ、その娘について少し気になっていたからちょうどいい機会だし……」
「よし。それじゃ明日の昼と放課後に探しに行こうぜ」
「りょ~かい」
会話が終わる頃にはそれぞれの自宅の前に到着していた。
とりあえず一旦別れ、二人は家のへ入って行き、暫くして結菜が自宅へやって来た。
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