『地居 真』

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「ありがとう」 とても久しぶりに顔を合わせて話しかけられた気がした。 体育教師には、毎朝挨拶されるが、俺は向き合っていない。 「じゃあ、わたし急いでるから!」 といって、教室の机からなにかを取り出し、駆け出していった。 その女は、4人グループの一人の“恵梨香”だった。 恵梨香は、そのグループの中で言うと、大人しめの雰囲気を持っている子である。 ツヤのある黒髪を胸ぐらいの位置までのばし、色白の清楚な感じの女だ。 「まぁ、どうでもいいか」 独り言をつぶやき、歩き出そうとした時にあるものが目に入った。 そこに落ちていたのは、水色のハンカチであった。 良くみると、ハンカチに刺繍で“erika”と書いてあった。 「さっきぶつかった時に落としたのか」 そう思った俺は、次の日に渡そうと思い、ズボンのポケットにしまった。
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