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平井は佳い女だと、賢政は素直に思った。 六角氏がいよいよ浅井氏を家臣に組み込む動きを見せはじめた今、賢政と平井の結婚はそれをあからさまに示しており、当然、浅井家中に於ける平井への風当たりは強い。 それでも何とか婚家に馴染もうとする平井は、実に健気でいじらしかった。 あるかなきかの微笑を浮かべて賢政を気遣う平井を見れば、連日、久政への不信を強める家臣団を何とか宥め賺して、浅井氏のこれ以上の衰退を食い止めようと躍起になっている賢政の心労も僅かに癒された。 自らの胸の内に芽生えはじめた恋情を、確かに賢政は感じていた。 そしてそれは、決して果たしてはならない恋情であり、果たすことも無い恋情であることにも、賢政は気付いていた。 恋情の直ぐ傍で育まれた浅井一族を率いる者としての責任が、近く勝る日が来ると、賢政はいちばんに理解していた。
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