姉川
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市の顔が、白を通り越して蒼に染まった。 紅をひかずとも桃色に艶めく唇も紫に染まって、いっぱいに開かれた瞳には絶望が映る。 「よいな、市姫。 お前は帰れ」 するりと、市の腕から長政の腕が抜けた。 一瞥をくれることもなく、長政は背を向ける。 長政の拒絶を受けて、市はその背を追うことも出来ない。 ああ。 ──嗚呼。 この目に見た幸福は、夢だったのか。 この手に抱いた二つの宝は。 幻だったのか──
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