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下らないと、八重は思う。
長政の人を見る目は確かだ。
長政が市に惹かれたのは、市が真実、浅井長政という男を慕ったからだ。
浅井当主でも、実家の同盟の相手でもなく、ただ長政という人間に市は惹かれた。
だから長政もまた、市に想いを寄せた。
たったそれだけのことだ。
「……八重、前にも言った筈だ。わたしには、お前がいれば良い」
その一言に八重は目を瞠って。
次いで、苦笑を滲ませた。
「そういうことですか」
当主の正室として尊ばれるどころか、信長の縁者として蔑ろにされる市。
長政を愛するが故に、市は傷付くだろう。
自分を責めて、その身に受けた血を忌むだろう。
八重も、もちろん長政を愛してはいる。愛されているとも思う。
けれど、八重は、市のようには愛せないし、愛されない。
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