姉川

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愛しいというのはきっと、幾通りもある感情だ。 八重が愛したのは浅井当主の長政だし、長政が愛したのも側室の八重だ。 何かが欠ければ、成立しなくなる愛情。 市と長政が通じた、無償の愛とは違うもの。 だから八重は耐えられた。 何を言われても、何をされても、自分は長政に愛された「側室」。 子も産み、それは男子で、妻としての役目も果たした。 文句があるなら、ここまで来い。 わたくしと同じくらい殿に愛されてみろ。 男子を産み、御家の役に立って見せろ。 八重はそんな心持で、ここまできた。 けれど、それを市に求めるのは難しいだろう。 自分が愛した「男」が他の女に欲を持って触れること。 それは、長政という「男」を愛した市にとっては、何よりも辛いことの筈だ。
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