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「そもそも、北の方様に帰れと申し渡しておきながら、何故こんなところにいらしたのです?」
「わ、わたしの城だ。わたしが何処にいようと自由だろう。八重こそ」
「わたくし?わたくしは、北の方様を慰めに。何処かの冷血漢に、随分とひどいことを言われたようですから」
胸にぐさぐさぐさっ!と見えない矢が突き刺さった長政が、軽くよろめく。
「……素直になられませ。その姿を透き見に来たと。北の方様がどのように思われたのか、確認しに来たと」
「別にわたしはそのような下卑た感情は――!」
「無いと申されますなら、今一度、北の方様に、帰れと告げてきては如何です?重ねて言われれば、北の方様の御意思も揺らぐかも」
「…………っ」
正論でずばずば切り込む八重に、侍女は青褪めた。
八重の方様、容赦ねえ。
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