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尚も藺を掻く平井の指を賢政は掬い、指先に出来た血の赤い玉を口元に運びかけ、寸でのところで止めた。
袷から手拭いを出し、丁寧に指先を拭く。
「見え透いた嘘を申すな。
誰にされた」
「いえ、いえ、本当にわたくしのさもしい思い付きにございます」
それしか仕込まれていない鸚鵡のように繰り返す平井に、賢政は厳しく言い放つ。
「わたしの妻たるお前に、児戯にも劣る稚拙さとは言えこのような不埒を働いた者がいる。
それは何れわたしの沽券に関わるだろう」
平井はそれでも首を振った。
「わ、わたくし、の、本当に、わたくしが、した、しまし、た」
途切れ途切れに、必死に繰り返す平井に、賢政は溜め息を零した。
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