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越前は雪深い。
雪に閉ざされてしまえば、退却もままならない。
元々戦より雅事が好きな義景は早く帰りたくて仕方がないようで、士気も下がり続けている。
一方の信長も、もう三月以上国元を空けている。
尾張からは、長島の一向一揆が信長の弟、信輿を攻め殺したという情報も入っている。
これ以上国を空けていては、事態が悪化していくことは目に見えていた。
双方――特に朝倉は、早く陣を引いてしまいたいというのが本音だった。
ただひとり長政だけが、山上に陣取れるのはまたとない好機ゆえ、一揆と連絡を取り合いながら決戦に打って出るべきだと訴えたが、義景は決して首を縦に振らなかった。
義景の言い分は、長政からすれば眩暈がするような内容だった。
戦は怖い、怖いのは嫌だ、だから動きたくない。
ジッと堪えていれば、信長とてずっと其処にいるわけにはいかないのだから、いつかは軍を引くだろう。
そうすれば、とりあえず今は凌げる。
また窮地にたたされたとしても、それはその時に考えればいい。
――確かに信長とてずっと比叡山の峰に陣取っているわけにはいかないが、浅井朝倉とてそれは同じことだ。
否、連合軍の方が、ずっとまずい状況だと言える。退却が難しくなるほどの豪雪に見舞われるということは、攻め入ることも難しいということだ。
それは、互いに軍備を整える余裕が出来る、ということでもある。
ただでさえ、信長と連合軍では兵力に差があり過ぎる。
ここで信長に軍を整えられては、連合軍に最早勝ち目はない。
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