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それを判っているから、長政は決戦を急いだ。
勝とうと思うのなら、今しか好機はない。
確かに、今を逃しても、いつかはまた好機が廻ってくるかもしれない。
けれども、「いつか」を待つ余裕など何処にもない。
だから、今しかない。
何故それが解らない。
命を預かる者として、「窮地に陥ったらそのとき考える」などというのは、三流以下の台詞だ。
ぐじぐじとした義景の態度が明らかになるに連れ、朝倉との関係保持を声高に叫んでいた浅井の臣達も、漸く、これはとんでもない間違いを犯したのではないかと気付きはじめた。
嘗て、豊かな生産力を武器に平穏を守り続け、他国にも幾度となく攻め入った朝倉氏。
だがそれは、義景の父たる朝倉考景と、名将朝倉教景の、その二人の功績だったのではないか。
義景は、考景でも、ましてや教景でもない。
さきの当主達が優れていたから、優れていることこそが朝倉氏にとっての「標準」だと思っていたが若しかしたら義景は、凡人に過ぎないのではないだろうか。
いや、へたをしたら、戦のいの字も理解できていないのではないだろうか。
其処に思い至ったとき、浅井方の臣下達の背が、一斉にゾッと凍りついた。
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