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あの時の員昌は、確かに長政に従うことを是とした。
けれど。
六角氏の重臣らが一斉に叛いたあの時。
長政は、命を札にしてみせた。
不信は積もり易い。
恩と義理と仇と不義理が同じだけあれば、悪い方が何故か目立つ。
浅井に叛く者は、これから、山ほどに出てくるだろう。
仕方がないことだ。
一度腹を括ったところで、生きたいものは生きたい。
その道が示されるのなら、そちらを選んでしまいたい。
これからは、雪深い近江の春も、夏に移ろう。
雪はきれいに解けて、さくらが咲いて、そうして。
浅井は滅ぶだろうか。
小谷の方が何らかの口添えをして、命を長らえるだろうか。
……有り得ない。
堅牢と謳われた小谷の城が焼け落ちる様が、何故か、員昌の眼裏に、鮮やかに浮かんだ。
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