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誰が何のためになどと言う問は愚問だった。 平井は六角家重臣の娘。 それ以外の答えなど端から在りはしない。 久政に期待する者はもはや数えるほどになり、一族郎党は浅井家再生の夢を賢政に見る。 賢政も十五。 賢政が家督を継ぎ、一族を纏め、六角氏と決別することを皆が望んでいる。 それには、平井も、賢政と言う名も邪魔になる。君臣の関係を現すそれらは、浅井氏にとっては疎ましいだけのもの。 平井を家に突き返し、いまこそ狼煙を上げろと言う声が、形になっただけだ。 婚家でこのような仕打ちを受ければ、普通はきっと、実家に報告する。それを一族は望んだ。 それくらいは、賢政にも解った。 そして、平井が、その浅井一族の想いを、その身一つに受け止めていたことさえも。
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