第五和 桔梗

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「総司は非番じゃないだろうが。」 「変わってもらえば良いんですよ!」 「誰に?」 「平助君に!」 「俺!?」 まさか自分になるとは思ってはなかったらしく、平助は驚いた。 「変わってくれますよね?」 「………はい。」 ニコニコとした笑顔なのに何故か総司の後ろに黒いものが見えた平助は頷いた。 その返事に満足した総司は再び土方歳三の説得し始める。 「平助君だって良いって言ってます!」 「脅しみたいじゃねえか。」 「何言ってるのですか。脅しみたいではなく脅しなんですよ。」 「たちの悪い事するな!」 「これが私なんです!土方さんだって直ぐに怒るじゃないですか!」 「それとこれは関係ないだろうが!」 「関係あります!脅しよりもたちの悪い事です!」 ………。 ぎゃーぎゃーわーわー言い合ってる総司と土方歳三から私は目を剃らして斎藤一さんを見た。 「……。」 喋りてー…。 喋っても良いのかな、良いのかな!? 座っても良いですかって言っても良いのかな!? ずっと立たされてるから足がダルくなって来ましたよ! 斎藤一さんはミケの手を掴んで腹話術みたいに動かしてるし…。 如月に帰りたいー。 「斎藤一さん、暇なのですよー。」 結局聞かずに斎藤一さんの隣にしゃがむ。 斎藤一さんはミケの手を動かすのを止めて無表情で見てくる。 「無表情なのは変わりませんねー」 頭を撫でようとして手を伸ばす。 ポンッと手が斎藤一さんの頭に届く前に何かに触れる。 「おおう。肉球ガードか。」 手の平にはミケの肉球が触れている。 斎藤一さんが掴んでいるミケを私が掴んで持ち上げる。 ミケを取られてちょいと不機嫌になった斎藤一さんが見えた気がしたけど、見ないふり。 「ミケ坊ーミケ坊ーミケ―…痛っ!?ミラクル猫パンチ!?」 高い高いするようにして名前を呼んでいたら、機嫌を損ねたミケ様の猫パンチが私の額にヒットした。 「蒼…。」 「あいさ?」 後ろからの声に振り向けば、そこには平助がいた。 「俺、自室に戻るから後の事は頼むな。」 声を小さくして言う。 後の事って土方歳三と総司と斎藤一さんの事か!? 私の返事を聞かずに部屋から出ていこうとする平助の服をガシリと掴んだ。 「待ってくださいよ平助氏!私一人にする気か!?」 「いや、一人じゃないだろ。一君もいるし。俺、用事があるから。」 あっさりと私の手を外すと部屋から出ていった。
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