第一和 京

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第一和 京

ここは江戸時代、幕末―… 鶯谷(うぐいす)色の着物に高い位置で1つ結びにした黒の髪。 背中には日本刀よりはるかに大きい刀を背負った少女がたどり着いた。 「やっと着いたなぁ、京に。」 少女は嬉しそうに笑うと京の町を探索し始めた。 「やっぱり初めは宿を探すことからだよね。」 少女―…刈夏 蒼は視界に入る甘味処から目をそらすと宿を探す為に歩き出した。 「♪~♪♪~」 あー今日はついてるかも! まさか今日中に京に着くなんてね。 鼻歌を歌いながら町中を歩いていると一軒の宿を見つけた。 「へぇー…如月(きさらぎ)か…。」 宿の看板をしばらく眺めてから頷き、私はこの宿にしようと決め、中に入った。 中はとてもシンプルでそしてとても綺麗だった。 「いらっしゃいませ。」 すぐに私が来たことに気づいた女将さんは入口近くまで来ると正座をした。 「あ、すみません。ここに泊めていただきたいのですが。」 私がそう言うと女将さんは微笑みながら言う。 「もちろんよろしいですよ。御一人様ですか?」 「はい。」 「分かりました。ではこちらへ。」 女将さんは立ち上がると階段を上がっていく。 私は女将さんに付いて階段を上がって行った。 「こちらが柚子(ゆず)です。」 案内された部屋は柚子と言うらしい。 中にはいるととても綺麗で窓から入る風が心地よい。 「ありがとうございます。とても気に入りました。」 私はそう女将さんに言うと女将さんは袖で口元を隠しながら笑った。 「こちらこそ、気に入ってもらえて光栄です。戌の刻になりましたらお呼び致します。それまでお休みになってください。」 「はい。」 おかみさんは部屋を出ていき部屋には私だけになった。 「うはー!今日はのんびりするもんね!」 私は背負っている刀を下ろすと刀を鞘から出し、鼻歌を歌いながら手入れを始める。 ―――… ――――――… ―――――――――… 「よし!」 刀を光に当てて満足げに笑う。 刀を鞘に納めると立ち上がり、もう一度背中に背負う。 ………。 ………暇暇暇暇暇ひーまー。 「よし、探検しよう。」 何もすることがない、それに今は猿の刻だしね。 私は荷物を整頓して部屋を出て、京の町へ行くことにした。 思いったらすぐ行動、これ結構大事だよね~。
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