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まぁ、あの時はそんな事に気付く余裕も無くて、取り敢えず妹をベットまで運んだのだが、理由も分からず――聞いても教えてくれなかった――怠そうにしている妹を、そのまま一人で寝かしておく訳にもいかなかった。
とは言え、その日は運悪く両親とも不在だったので、俺は携帯を取り出して救急車を呼ぼうとした。
だがその時、携帯を持った俺の袖口を妹がキュッと掴んだかと思うと『ハァ……ハァ……らい……ッハァ……ハァ……じょぅぶ……らから……ハァ……ハァ』などと、朦朧としながらも真っ赤な顔で何度も必死に止めるので、俺は渋々ながら救急車を呼ぶ事を諦めた。
そこで俺は、救急車の代わりと言うわけでも無いが、ベットの横に座って妹の手を握って看病しながら一夜を明かしたのだ。
ところがだ、翌朝俺が目を覚ますと、あんなにグッタリしていた妹は既に起きていていて、元気に朝食を作っていたではないか。
しかも、『よし君、おはよぅ』などとニコニコと笑顔で挨拶して、朝からやたらと豪華な料理を並べていた妹は、まるで何事も無かったかの様にケロッとしていて、あんなに心配した俺が馬鹿みたいだった。
正に、兄の心、妹は知らずってヤツだ。
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