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嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ!!
……全ての音が消えた。
時間が止まった気がした。
不意に前から視線を感じて顔を上げると、
誰かがこっちを見ている
直感的に思った。
あぁ、陽炎や、って。
何故そう思ったのか分からない。
でも陽炎だと思った。
呆然と見ている俺に向かって、その陽炎は
『嘘じゃないぞ』
と、声が聞こえたわけではなく、頭の中からそう聞こえた。
陽炎は楽しそうに嗤っていた。
夏の空の水色、頭ん中をかき回すような蝉の音に全てが眩み
そこで俺の意識は途絶えた。
最後に見えた陽炎の姿は、誰かに似ていた。
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