「ジャックと豆の木」

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「やっりい、俺役なしー♪じゃあなー、みんな頑張れよ!」 「あ、俺もですね。すいません、休憩頂きます。」 「え、何これ。今から何が始まるの?」 「あれ、拓史、久しぶりー。劇だよ、劇。今回はお前が主役だって。」 「聞いてないし、面倒くさ…。ていうか、本編で出番なかった俺が出ていいの?」 「出番のこと言うなら、オジサンだってどっこいどっこいよ?うわー劇なんてン十年ぶりだなあ。」 「いいじゃん、マスターさん、だっけ?その髭とか『老人』役ぴったり。」 「そう?じゃー頑張っちゃおうかな!」 「それはいいんだけどさ…ちょっと俺たちの役、無理矢理すぎない?ナツちゃんなんてとうとう無機物じゃない。ねえ、ナツちゃん?」 「………。」 「…ナツちゃん?」 「ん?…ああ、なんでもない。さ、行こうか。」 ********* どうも、こんにちは。 本日も当劇場にお越しくださいまして、以下同文。 今回は新たなキャラクター二人も交えまして、童話劇『ジャックと豆の木』始めさせていただきます。 むかしむかし。 ジャックという名前の男の子が母親と二人で暮らしていました。 ジャックは家に一頭だけいるウシの乳をしぼって、 それを街に売りに行くことで家の生計を立てていましたが、その雌牛も老いて乳を出さなくなりました。 「こうなったら仕方ないわね。ジャック、ウシを街に行って売ってきなさい。」 「はいはい、分かったよ母さん。」 母親にそう言われ、ジャックは雌牛を引いて歩き出しました。 すると道中、髭の老人にばったりと出くわしたので、 ジャックは歩みを止めて、やたら不審な老人を見ました。 「ちょっと、不審ってなによ、不審ってー!」 そういうところですよ、ご老人。 字面だけ見てればオカマにしか見えませんから、貴方。 せっかくの初登場です、ちゃんとキメてくださいよ… ジャックもいきなり現れた不審者に、呆れ顔を作ります。 しかし、しばらくして道を塞ぐ老人に話しかけました。 「―何の用なの、おじいさん。」 「そうそう。少年、そのウシを売りに行くの?」 「そうだよ。高値で売れると思ってね。」 「高値?」 老人はぴくりと眉を上げ、いぶかしげにウシを覗きます。 それはそうでしょう。このようなくたびれたウシにどうして高値が……って、あれ? こんなこと、台本に書いてありましたっけ? .
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