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「見たところ、老いた雌牛にしか見えないけど…」
「そうだね。こいつ自身に価値はないよ。…でも実はさ、こいつ昔、ダイヤモンドを飲んだんだ。」
「!?な、なんだって!?」
びっくりして目ん玉をひんむく老人。
いやいやいや!そんなオイシイ付加ストーリーはないはずですよ!?
「で、でも…それならダイヤモンドそのものを…」
「そりゃ、ダイヤモンドを取り出してそのまま売った方がいいにきまってるよ。でも僕たちにはウシを解体する道具や技術がないからさ、仕方なくこいつごと売りに行くってワケ。」
若干食い気味におじいさんの発言を遮り、話を続けるジャック。
その発言には全く淀みありません。
まるで最初から用意された台詞のように……
…!
ジャック、貴方、まさか…
「おじいさん、よかったらこいつ、買わない?」
ジャックは、少年らしからぬ笑みを浮かべ、おじいさんに商談をもちかけました。
おじいさんはウシとジャックを見比べ、ううむ、と唸ります。
ペ、ペテンです…!
ペテン師ジャックがここにいますよ、皆さん!
のっけからこんなダークヒーローでいいんですか!?
子どもが泣いて親が怒り狂いますよ、このジャックは!
「そうだなあ、そのウシはすごく欲しいんだが…あいにく今、現金は持ってなくてね…」
「ああそう、じゃあいいや。バイバイおじいさん。」
「いや、待て待て!何も交換するものがないとは言ってないだろう!ほら、これをやろう!」
「……何これ。豆?」
ジャックは差しだされた袋の中身を見て、首をかしげます。
老人から渡されたものは、何処からどう見ても何のへんてつもない豆にしか見えません。
ジャックは顔をあげ、再度老人に問いかけます。
「なんだよ、こんなもの、ダイヤモンドと交換できるわけないだろ。」
「いいから話を聞きなさい。これはな、ただの豆じゃないんだ。―幸運を呼ぶ魔法の豆なんだよ。」
「魔法の、豆?」
老人は語ります。
曰く、これは不思議な力を持つ豆で、持つものは幸福になれるだとか。
ダイヤモンドとは比べ物にならないくらい貴重なものだとか。
「…セ●ズ?」
…それは言ってはダメですよ、ジャック。
しかも違いますし。確かにダイヤモンドよりは貴重でしょうが。
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