「ジャックと豆の木」

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「だからさ、この豆とそのウシを交換してくれないかい?」 「…まあいいよ。交換しよう。」 「本当かい!?ありがとう!」 喜び勇む老人。 ジャックは老人の言うことに承諾し、雌牛と豆の袋を交換しました。 こうしてジャックは豆の袋を得て帰路についたわけですが…… 「ま、もしこれが偽物でも、今度は僕がこの『魔法の豆』を高値で売ればいい話だし。」 嘘は得意なんだよね、と笑うジャック。 …なんか嫌だ。怖いこの子。 すいません、私もうやめたいんですけど、この仕事。 ダメですか?…あ、ダメですか。 そうですか……はあ。 ―― 「何ですって!?ジャック、あんたウシとこのちっぽけな豆を交換したって言うの!?」 「そうだよ、母さん。…そう怒鳴らなくてもいいじゃないか。」 「怒鳴るわよ!あんた、馬鹿じゃないの!?こんな物と交換するなんて!」 「無駄遣いは母さんの方じゃないか。この間も高い化粧品こっそり買ったの、知ってるよ。」 「おだまり!必需品だから仕方ないじゃないの!」 小さな家の中で、激しい言葉の応酬がなされています。 それがまあ、醜い。 特にお母さんの方は鬼婆みたいな顔で叫んでいます。 「うるさい!誰が鬼婆よ!」 「事実だよ、母さん。」 「ジャックは黙りなさい!それにしても何よ、この豆!何の腹の足しにもならないじゃない!」 「え、でもそれ、魔法の豆らしいよ?」 「は?魔法の豆?」 「そうだよ。持ってたら幸せになれるんだって。きっと食べたら満腹になれるよ。」 けろりとそんな無責任なことを言うジャック。 …だからそういう魔法の豆じゃないって言って…… …! ジャック、貴方、まさか…(2回目) 「そ、そうなの?でもそんなおとぎ話みたいなことあるわけ…」 「分からないよ?母さん、食べてみなよ。いいことあるんじゃない?」 「…フン、じゃあ騙されたつもりで食べてみようかしらね。」 そう言って、お母さんは豆をつまみ上げ、口へと運びます。 だ、だめです! お母さん、それは食べてはダメなタイプの豆です!! このままでは…お母さんはっ…ああ!! お母さんが口を開け、誰もが息を飲んだ瞬間。 その時です。 一陣の風がびゅう、と室内に巻きおこり、お母さんの手から豆が零れおちました。 .
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