「ジャックと豆の木」

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するとどうでしょう。 豆から芽がにょきにょきと伸び、あっという間に巨大な豆の木が生えたではありませんか! 豆の木は雲をも突き抜け、てっぺんが見えないほど高い木になりました。 お母さんもジャックも、ぽかんと口を開けてその様子を見ていました。 「…あ、やっぱり魔法の豆だったんだ。」 ジャックがぼそりと呟きます。 対照的に、お母さんはさっと顔色を変えました。 「…っ!ね、ねえ…もしかして私、あれを口にしてたら…」 「そうだね、胃を突き破られて死んでたかもね。」 「ー!!あ、あんた、知ってたの…?」 「まさか。でもまあ何かが起こるかなあ、とは思ってたよ。」 「……」 ジャックの非情なひとことに、絶句するお母さん。 酷すぎます。 実の母になんてことをするのでしょう、この息子は。 しかも『魔法の豆』について知っていたはずですからね、彼は。 …人間性を疑うレベルですよ、これは。 …しかし、よかった。 あやうくスプラッタを見る羽目になるところでしたよ… あの豆、遺伝子組み換えで作った、『本物の魔法の豆(化学)』でしたからね。 スタッフ、ありがとうございました。 もう強風機しまってくれていいですよ。 「じゃあ母さん。ちょっとこの豆の木に登ってみるよ。上に何があるのか気になるしね。」 「……え、ええ…行ってらっしゃい。」 ジャックは未だショックから抜け出せない母親を置いて、さっさと外に出て豆の木に登ることにしました。 非情です。最低です。 なんでしょう、このジャックは。 悪逆非道を地でいっているようなもんじゃないですか。 ねえ、やっぱり彼をここに出してはまずかったのではないでしょうか… これじゃ、多分聖悟くんの方がましですよ…ヒーローとしては。 「…何か言った?」 いいえ…何も。 ……はあ。 ―― .
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