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「すごいな…(セットが)。一面真っ白だ…(どれだけ金かかってんだろう)。」
巨大な豆の木を登り始めて数十分後、
ジャックは木が雲を突き抜けても登り続け、とうとう天辺までたどり着きました。
そして辺り一面雲に覆われた世界を見て、そんな…本音がちらちらと見えるような台詞を吐きます。
ジャックは、時々いらないことを言いつつ、雲の中にぽつんとそびえ立つ城を見つけ、そちらに向かいました。
「そこにいるのは…男の子?どうやってここに?」
城の扉を開けてすぐ、ジャックは綺麗な女の人に出くわしました。
白い衣裳を着流している、さながら女神のような風貌の女性にジャックは一瞬見惚れましたが、
すぐに大きな豆の木を登ってきた、と正直に答え、女性のことを尋ねました。
途端に、女性は顔を曇らせます。
「私はここに住んでいる人食い巨人の妻よ。あの人に見つかると食べられてしまうわ…悪いことは言わないから、早くお帰りなさい。」
そう、ここには世にも恐ろしい人食い巨人がいるのです。
人間が大好物だという巨人の話を聞き、ジャックは体を震わせました。
探険しに来たはいいものの、食べられてしまっては元も子もありません。ジャックは忠告通り、城から出ようと扉に手をかけました。
その時です。足音が聞こえてきました。
それは段々と大きくなり…何かがこちらに近づいてくるようです。
「ああ、あの人が帰ってきたんだわ!仕方ない、こちらに隠れなさい。」
巨人の奥さんはそう言って、ジャックを台所のかまどに隠しました。
間一髪、ちょうどジャックが隠れ終わった時に、巨人が姿を現しました。
がっしりとした体躯の大男です。
手にはたくさんの金貨の袋をぶら下げて、じゃらじゃらと鳴らしていました。
「帰ったぞ。」
「はい、お帰りなさい、あなた。」
「…なんだか人間のにおいがするな。それも、子どものだ。どこかにいるのか?」
「あら、そんなはずはありませんわ。人間なら、おととい頂いたではないですか。」
「そうか。」
奥さんはそんな風にはぐらかして、巨人にお酒を注ぎます。
巨人は無表情でそれを受け取り、一気にあおりました。
そして、部屋に戻る、とひとこと告げた後、男は特に言及もせずに去って行きました。
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