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…あれ?なんだか、普段の彼らしくありませんね?
なんか、すごく不機嫌、と言いましょうか。
とにかく巨人さんはものすごく虫の居所の悪そうな様子でした。
何故でしょうか。
まあそれはともかく、無事に巨人が去り、ジャックはかまどから這い出ました。
「あの人は帰ってきたらすぐに寝てしまうの。今のうちにお逃げなさい。」
「いや、あのすごい金貨の袋みたら、そうも言ってられないよ。」
「え?」
「あれだけあったら、ひとつくらい、いいよね。もらっていくよ。」
「ええ?あ、ちょっと!?」
なんてことでしょう。
金銭に目のくらんだジャックは、奥さんの言うことを無視し、巨人の入って行った部屋に向かってしまったのです。
いっそ食われてしまえ、と思ったのは私だけではないでしょう、ええ。
こんな犯罪臭のする主人公なんか擁護しようがありませんからね。
その部屋は巨人の体に合わせて作られたのか、家具も装飾品もすべてが巨大でした。
ジャックはそっと扉の隙間からその様子を伺います。
巨人はテーブルの上に金貨をぶちまけて、数を数えているようでした。
―それも、かなり雑にイライラした様子で。
…本当にどうしたのでしょうね、国崎聖悟くんは。
ジャックも首をかしげます。
やがて巨人は疲れたのか、
金貨を数えるのをやめ、机に頬杖をついていびきをかき始めました。
奥さんの言う通りです。
ジャックはニヤリと口角を上げました。
…不用心ですよね、この巨人。
せめて金貨をどこかに閉まってから寝ればいいのに。
これじゃあ、ジャックじゃなくてもお金を盗みたくなってしまいますよ。
「じゃ、いただきっと…」
ジャックは宣言通りそっと部屋に忍び込み、巨人が持っていた金貨の袋をひとつ担ぎました。
そして、忍び足で部屋を後にします。
巨人は全く気付かず、ぐーぐー寝ていました。
「うまくいったな。これはすごい大金だぞ。」
「…本当にやるなんて思わなかったわ。」
心配して見に来た奥さんは、
金貨の袋を肩に担ぎにっこりと笑うジャックを見て、呆れ顔です。
さあ、これでやっと帰るのか―と思いきや、ジャックはふと彼女を振り向いて問いました。
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