「ジャックと豆の木」

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ジャックはからからと笑います。 可笑しくて仕方がない、と言った風に。 そして半笑いでその場にいる人(鳥?)に問いかけました。 「問題。今後聖悟はどうすると思う?俺、劇放棄するに千円。」 「じゃ、私は…役放りだして那津を連れて帰るに100ドル。」 「むしろ鬱憤晴らしに劇ごと滅茶苦茶にするに150ユーロ。」 「賭けになってないじゃん、君ら…」 ハープの女性ははあ、とため息をつきました。 「……お前たち、何をやっている。」 すると突然、低い声があたりに響きわたりました。 そう、巨人です。 寝ていた巨人が目覚め、ここまでやってきたのです。 ジャックは驚きに目を見開きましたが、すぐに不敵な笑みを作り、巨人に対峙しました。 「やあ、彼女に避けられてる巨人さん。こんにちは。」 「お前…宏樹から聞いたな?」 「まあね。さて、巨人さんには悪いけど、アンタのお宝もらってくよ!」 強気にそう言って、金貨の袋と鶏、そしてハープを持つジャック。 ちょ、欲張りすぎですよ! 一気に三つとか! これには巨人も激怒し―― 「…いい。別に持って行きたければ持っていくがいい。」 「…え?」 …え?激怒…しませんでした? ジャックも、奥さんも、…勿論私も、 巨人の急なひとことにぽかーんとします。 巨人は憮然とした表情を崩さないまま、ジャックに近づきました。 「その代わり――」 「…うわっ!?」 そして。 ジャックが抱えていたハープを楽々と持ち上げます。 ハープの女性は、思わず声を上げました。 「このハープだけは渡さないが、な。」 『他のものは好きにするといい。』そう言い残して、巨人は再び自分の部屋へと戻って行きました。 …ハープを腕に抱えて。 「――っ、離せ、聖悟!」 「うるさい、黙ってろ。」 そんな二人(?)の言い合いが聞こえます。 しかし、その声は段々と遠くなっていき…ついには聞こえなくなりました。 .
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