二舞*千客万来

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いくつかある台のうちの一つで音がした。 見てみると、酔っ払いの男ともう一人の男が揉めていた。というより、一方的に酔っ払いが喚いているだけのようだが。 ……真昼間からいいご身分ですね… 「お客さん、他の方に迷惑になります。他所へいってもらえますか?」 一言言って、落ちて目茶苦茶になった器を片付けるためにしゃがんだ時だった。 「あ゙ぁ?てめぇ、客に向かってなんちゅう口の聞き方だぁ?」 「恭彩ッ!!!」 酔っ払いが刀を抜いたのだ。 少し離れた位置にいた阿久津が叫んだ。 しまっ…た 私としたことがッ!! 回避しようとしたとき… キン!! 誰かが藤倉の前に立ちはだかり、刀で受け止めた。 「甘味屋で刀抜く馬鹿はそうそういませんよ。…ご店主、怪我ないですか?」 「すまない……油断しました」 カチンと刀を鞘に納めた男は、長身で長い黒髪を首辺りで結い肩から流している、男から見ても惚れてしまいそうなくらい美丈夫だ。 酔っ払いの首根っこを掴んでいる。 「さて…コイツどうします? 突きだしますか? 斬りますか?」 …なかなか物騒な奴である。 人のこと言えない藤倉は思った。 「とりあえず、弁償してもらえたらいいです」 「そうですか。 酔っ払い、だそうですよ。金子置いてさっさと帰んなさい。 二度と僕に会わないほうが身のため、です。」 殺気を出しながら男はそう言った。 …こいつもなんかただの侍じゃなさそうだ。 今日は謎な客が多いな。
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