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ところで、藤倉の営む甘味屋……の名前は"たらふく"という。
阿久津命名である。
「もう少し気の利いた名はなかったものですかね…」
「すっげぇいいと思うけどな!!」
藤倉と阿久津は少し遠出し、小豆を調達した帰り道である。
藤倉がなんとなく気落ちしている理由はというと、少し前のこと………
『ご主人、いつものくださいな』
『はて……どちらさんでしたかな?』
小豆を卸してくれるここの問屋の主人は、少々呆けている。……商売的に如何なものなのか。
『"たらふく"の藤倉です。』
『あぁ―…』
思い出してくれたのだろうか?
『うちは鮮魚は扱っておりませんえ?』
『は………?』
『"鱈(タラ)"と"河豚(フグ=フク)"はこの先を行ったあっちの……』
横をちらりと見ると、阿久津が肩をカタカタと震わせている。
このままでは魚屋に行かなくてはならなくなりそうなので。
『…結構です。
ご主人、甘味屋の"たらふく"です』
『あ、はいはい!!
藤倉さんのところのね!!』
――さっき言ったじゃんっ!!!
キャラ崩壊寸前の藤倉は、ぐっと胸のうちで堪えた。
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