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「何故刀を抜かなかった?
お主、刀使えるのだろ?」
今日の藤倉らの装いは袴を着て、刀を差している。護身用みたいなものだ。
……逆に襲われたが。
素手で対抗する藤倉を見て、新撰組の男は何かを感じ取ったらしい。
「無駄な血は流したくないもので。それに、私はただの商人です」
「ほぉ…その腕は戦うための腕ではないと。」
男はじろじろと見てくる。
……腹立つな。
「沖田も馬鹿にされたものだな、奴が刀を捕られるわけがない…アレ、菊一文字ではないからな。ただのなまくら刀だ」
男は聞いてもいないのに喋り始めた。
……ときだった。
「いたぞ!!あっちだ!!」
ダダダダダダダ―…
何かを追いかけて街中を駆け抜けていく浅葱色の集団が見えた。
「チッ…少しは休ませて欲しいものだ。
失礼する」
しばし傍観していた藤倉は、黙って見送る。
こちらに走って来る浅葱色がひとつ。
「どこで油売ってんだよ、桂見つけたぜッ!!」
「原田さんか、今行く。
……私は"斎藤一"だ」
――聞いてないし!!!
勝手に名乗って去っていった男…斎藤一。威圧感だけは尋常ではない。
「浪士組、か…」
「"新撰組"だッッ!!!」
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