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………ちゃぽん
…………
「恭彩…俺、帰りたい」
ぐずる幼子みたいなことを言う阿久津だが、藤倉も同感である。
「さっさと、帰りましょう。」
ぽかぽかと温まった身体で部屋に戻り、戸を引いた。
御膳が……5つ。
………
「湯加減どうでしたか?
どうぞお召し上がりください」
「いや、か……
…いただきます」
奥に座す吉田の視線が刺さる。
"僕たちとは食事できないの?"と…。
「君たちって、"ただ"の甘味屋なんだよね?」
御膳の煮物をつつきながら吉田が尋ねた。質問の意図は、間者なのか否か…見極め。
「はい」
「いいえ…とは言うわけないか。国は?」
何なんだ。
どれだけ人を疑えば気が済むのか。少しムッとした藤倉。
「生まれは、江戸です」
「気を悪くされたのなら、すみません。
吉田は…少々苛立っているのです」
…見ればわかる。
「桂、さん?誰のせいだと思っているの?
…ごみ溜めに置いてきてくれてもよかったのに。
恭彩さん、このご時世だからね、全てを疑わざるを得ないんだよ。すまないね」
吉田のその言葉で、空気がやんわりとなった気がした。
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