三舞*長州の浪士

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――よかった……日付が変わる前に帰って来れた。 藤倉は、とりあえず小豆を仕込み始めた。 『僕たちは"長州藩士"だ。尊攘派志士…倒幕派。 ば桂さんが、今日追い掛けられていたのもそれが理由だね。新撰組とは真逆の存在なんだ』 『ばかつら…って……』 …桂は涙で前が見えていないようだ。 『何故そんな話を、私に?』 初めは疑ってかかり、それに私は私について殆ど話してはいない。 『…嬉しくて、ね。 京に来て、普通に普通の人と交わることができてさ。 周りは敵だらけ、明日の命も保証されない。 恭彩さん、どうかどちらにも傾かないで。あなたを斬ることになるやもしれない…からね。』 『…はい。 心遣い感謝します』 ……… 存在が消えかけている人物が…一人。 「…阿久津? やけに静かではないですか?」 いつも一言多い阿久津が風呂から上がった辺りから、ずっと黙っている。 「恭彩…… 隠してるつもりは無かったんだけど、俺、薩摩の生まれなんだ」
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