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「チッ…」
盗っ人は、反物と金子(カツアゲされたもの)を置いて逃げていった。
「あの……そこの殿方…」
先程、悲鳴をあげていた女子がおずおずと近寄ってきた。
「あぁ…反物、汚れてしまいましたね。」
「平気です。
ほんま、おおきに。
…お名前聞いてもえぇですか?」
よく…見なくとも女子の頬は赤らんでいる。
男はスラリとした長身、切れ長の目は端正な顔立ちを際立たせ、漆黒の髪を下の方で緩く結っている。…なかなかの色男である。
「名乗るほどの者ではありませんよ」
どこにでも転がってそうな在り来りな台詞を口にした。
女子は残念そうな表情をし、丁寧に一礼して去っていった。
「"藤倉恭彩"」
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