一舞*京の町商人

5/8
前へ
/215ページ
次へ
「……阿久津ですか」 「何カッコつけてんだよ。余計惚れちまうだろー?」 「うるさい。黙れ。 気持ち悪いことを言うな」 ひでぇ…と呟きながら店の影から出てきた男は、阿久津傑(アクツ スグル)。 ……まずは善良なのか何なのか解らない男から説明するとしよう。 藤倉恭彩(フジクラ キョウサイ) ここ京で、甘味屋を営んでいる。…今はこのくらいにしておこうか。 ちなみに、阿久津は友人だ……多分。 (雑だな、オイ…) 「で?今日は何用ですか?」 藤倉はやや鬱陶しさを交えた声色で言った。 さっきの一悶着で汚れた暖簾を竿から外し、傷んだ竿は隅に置いて店に入る。 「冷たくすんなよー。淋しいじゃんか。」 「………」
/215ページ

最初のコメントを投稿しよう!

223人が本棚に入れています
本棚に追加