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「お優しいのですね」
そしてセイシアは、能力を発動したまま、彼と話しをする。
セイシアは会話をしながら、前髪に隠れている彼の黒い瞳に、自分の碧い瞳を合わせ、ずっと不思議に思っていた。
(口で紡ぐ言葉と、心の中で紡がれる言葉が全然違う……。それに彼は__、)
__優しい。純粋なほどに……。
それに、彼と言葉を交わすたびに、冷え切った心が軽くなって、暖かくなってゆく。
セイシアは無意識と言っていいほどに、何度も彼に問いかけていた。
「あなたのお名前は?」
何度も__、
「またすぐに会える気がします」
そして彼は、今度こそこの場を去っていった。
セイシアは、彼が世話をした白い子猫と眼を合わせると、子猫は小さく可愛い声音で「みやぁ」と鳴く。
いつの間にか彼女の表情は数分前と一変して、見る人全てが幸せになれそうなほどの笑顔になっていた。
その時、彼女の周りに白い軍服を着た人達が現れた。
セイシアは状況を理解し、ようやく安堵すると、短いため息を一つ洩らす。
が、そんな彼女の背中に、無情で残酷な言葉が浴びせられた。
『やっと見つけましたよ、醜いメスブタさん』
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