花的お嬢: リオの場合[1]

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「リオ。次のライブ、リオが仕切ってね」 そんなユナの言葉に、リオは目を丸くした。 今は昼休み。 パンを買いに廊下に出たときに、ユナとはばったり出会った。 緩くウェーブがかった青毛という、目立つ出で立ちのユナを見逃す筈がない。 「何、言ってるの先輩。それは先輩の役目じゃ」 弁明するが、ユナはかぶりを振った。 「主催が決めたことよ、逆らえないわ。次の進行役はリオだから」 有無を言わせぬ強い口調には、口をつぐむしかない。 普段は強気のリオも、ユナには逆らえない。 それだけ告げて去っていく相手の背中を、鼓動が早くなるのを感じながら見送った。 リオこと結城 理緒は、ユニット“μRo(ミューロ)”に所属する歌手。 中学二年生の頃、14歳でデビューしてすぐに、ユナこと松中 佑奈とは出会った。 芸能界では自分より11ヶ月先輩にして2年11ヶ月早く生まれた彼女は、当時16歳。 それでも、凛とした大人の振る舞いは今と変わりない。 それからリオとユナのユニットであるミューロが結成されるまで、時間はかからなかった。 リオはユナの元で必死に歌を練習した。 あれから1年半。 ユナと同じ高校を選び、少ないが友達もできた。 皆、歌手というだけでどこか敬遠していたが、今では慣れたようだ。 歌手活動と高校生活の両立は難しいが、それはユナも同じこと。 文句は言っていられない。
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