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が、まぁはぐらかしたところで見据える未来は、ない。
結局は説明するのが関の山だ。
ふむ、仕方ないな。
あのな、と前置きし、俺は森崎に詰め寄る。
「夢を持つのは勝手だけどよ、それが実現できると思うか?
できたとしても、挫折した時に人生は変わる」
森崎は首を傾げる。
わからないのか? わからないなら説明してやろう。何だ、調子が良い。
「夢を決めて、それに向かって走るのは良い。青春アニメでもそれがだいたいで、成功している。
が、所詮アニメだ。現実とは違う。
例えば小学生の時からピアニストを目指す少女がいた。
その少女は勉強を惜しんでまでピアノを弾いていた。
しかし、ピアニストになれなかった。
となったらその少女はどうする?」
俺は森崎に投げ掛けるように問い掛け、俺は息を吐いた。
簡単な話だ。例え的にも、答えも。
早くに夢を決めてしまったために、少女は自分の道を狭めてしまった。
ピアニストを目指す道は真っ直ぐな道だっただろうが、通行止めになったら曲がることができない。
行き止まりだ。
「そ、んなの……」
森崎は答えを詰まらせ、考える。
少し西に向いた陽射しが、森崎を照らす。
少し眩しく感じ、目を細める俺。
うっとうしくも感じられた。
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