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俺は高校生になった。
時が経てば当たり前の話ではあるのだが、前提として出しておかなければ進まない話もある。
そして俺には夢がない。
そう。それが全ての事の発端だったのだ。
高校生になったばかり。夢の無い人間も少なくはないだろうと思っていたのだが、なんだ、少なかったようだ。
いやむしろ、高校生になって夢が無い方が珍しいと奴は言った。
夢なんて形の無いものを抱えて歩くのはごめんだ、と対抗を試みるのだが、机をバン! と奴は両の手の平で叩く。
こりゃ痛そうだ。涙目になってやがる。
「夢が無いなんておかしいよ! ううん、異常! 変態変態変態!」
初対面で変態と呼ばれたのは初めてだった。貴重な体験をさせて貰ったと思うよ。まったく。
「何が変態だ。夢なんてそうやすやすと決めるもんじゃないだろ」
俺は半分疑問形、半分否定を含めながら言った。
やっぱり手が痛いんだな。涙目になって、鼻を啜る。
おいおい、もっと女の子らしいやり方があるだろうに……
「うるさい!」
ならどうすればいいのだろうか。
このままでは俺が泣かせたみたいになってしまう。
幸い、放課後ってこともあり、周りに人はいない。
本当にどうしてこうなったんだろうか。
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