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「森崎は、何に入るんだ?」
咄嗟に湧いた言葉は、実に詰まらない、何の変哲もない質問だった。
詰まらないと言ったが、詰まる人には案外詰まってしまうのかもしれない。
俺の問いに森崎は沈黙し、俯いた。
聞こえる音は自転車のタイヤが回転する音のみ。
はて、森崎にとっては詰まる質問だったようだ。
「この学校のルールはあんたも知ってるわよね?」
口が開いたかと思うと、聞こえて来たのは疑問文だった。
何かで読んだのだが、疑問文を疑問文で返すというのは相手を舐めている、または、話を逸らそうとしているのどちらかだそうだ。
が、森崎からはそんな狡い思いは見当たらなかった。
「あぁ、知ってる」
俺は森崎を一切見ずに言った。
何か、悪い予感がするのだ。
この学校のルールというのは、生徒は必ず部活に所属しなければならない。と言うものだ。
「この学校、部活が多いのよね~。なぜかしら」
それは疑問文ではなく、どちらかと言えば独り言に近かった。
それすなわち、自分で答えを言うつもりだということ。
ここに来て、俺は全てを後悔することになる。
全て。部活を決めていないと言ったこと、正直に答えなかったこと、森崎と出会ったこと。
生まれてきてごめんなさい。
「あたしね、部活を作ろうと思うの」
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