黒歴史は二日目で。

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そして俺が唖然と周りを眺めた時、ふと、とある女と目があった。 そう、それが今回の要注意人物、推理物で言えば犯人、ゲームで言えば裏ボスに値する女、森崎 楓(モリサキ カエデ)。 ついさっき、数学の時間にやった自己紹介で名前は把握済みだ。 俺は、何を思っただろうか。彼女も同類だと思ったんじゃないだろうか。 皆が机に突っ伏す中、唯一顔を上げているのは俺と彼女の二人だけ。 仲間だ同類だ、いやはや心強いなぁ。 しかし、彼女は世にも奇妙な顔を浮かべたのであった。 それは唖然としたような、ポカーンを口を開け、あーあ、せっかくの美貌が台なしだと心にもないことを思ってみる。 しばらく目が合い続ける。 女の子と合うなんて実にドキドキする展開だが、あいにく俺はときめかない。 蛍光灯の光を反射する黒い髪。 それは少しくしゃくしゃになっていて、それを後ろで一つに結んでいる。 そういう髪型だと取るのは簡単だが、がさつにしか見えないのが残念なところ。 そして彼女は、俺に何かを訴えかけてきた。口パクで。 通訳するに、アンタ、ユメガナイノ? 「あぁ、ないな」 口パクで思いを伝えられるほど器用じゃない俺は、ボソリと呟く。 怪訝そうな表情を浮かべる彼女。 いいじゃないか、高校生で夢がなくたって何ら不思議じゃないと俺は思うがね。
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