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彼女はしばらくの間、黙っていた。
何を思っているのか、当然俺にわかるはずもなく、その間別のことを考えることにする。
そう、可能性が消えたのだ。告白されるという僅かな可能性が。
期待していたわけじゃない。じゃない、が、やっぱり俺とて男の子だ、健全な男子高校生だ。
多少の可能性を信じたっていいじゃないか。あ。
「何がしたいって言われてもねぇ……」
微妙にニュアンスを変えて、彼女は復唱してきた。
まだだ、まだ可能性は残っているぞ。ここで彼女がラブでコメなことを言えば俺は報われる。
しかし、そんな奇跡が起こるわけもなく。彼女の答えは、
「あたしね、論争がしたいの」
俺の想像を遥かに上回るものだった。
へ? 論争?
それが俺の素直な感想だ。
告白にしては新しいパターンだと関心し、それで成功すると思ったことに感心する。
俺はどんな顔をしていただろうか。恐らく、ポカーンと、鳩がM37を食らったような顔をしていただろう。
即死だ。
そんな俺を他所に彼女は続ける。
「あたしね、将来は評論家になりたいと思ってるの。そこで、練習も兼ねて論争できる相手を探してるのよ」
自我の強い女だな。あたしね、から会話が始まる。
って、―――
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