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「まさか、俺がその相手に選ばれたってことか?」
心に浮かんだ台詞がそのまま言葉になって、声に出た。
これは新しい告白のパターンだ。付き合うとか云々じゃなく、俺のその論争の標的にしてきやがった。
「そそ。いやぁ、夢がないって言った時は最高にハッピーだったよ!」
あ、あたしね、から始まらなかった。
いやいや、そんなことより。
じゃあ何か? 今まで夢がどうなの言ってたあれは高校生としての在り方を言ってるんじゃなくて、単に俺に夢がないってことを何回も何回も確認してたってわけか?
「そうよ。あたしには夢がある。あんたには夢がない。論争は反対の立場の人間がいて初めて成り立つの」
だからあの時目が輝いてたのか……。
勘違いだと思っていたのに。
「俺なんかで本当に良いのか? 他に相手は幾らでもいるだろうに」
こいつの言ってる論争は恐らく本物だ。
小学生の時にやった討論会みたいな緩いやつじゃなく、言葉の浴びせあい、熾烈な戦いを繰り広げる戦いの場……。
素直なところ、巻き込まれたくない。
だからこうして遠回しにやりたくないってことを言ってるんだが。
「いいのよ。本番ともなれば相手なんて選べないわけだし」
評論家になりたいなら、ここら辺の俺の心境も読み取るべきだと思うんだ。
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