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「ねぇ、やろうよ! ちょっとでいいからさ!」
ごり押し……。
いや、良いとは思うぞ。そりゃそういう職に就きたいんだ。多少強引なやり方でも、自分の意見を主張するのは良いことだ。
そして、こいつは評論家なんかよりも政治家、しかも首相を一方的に叩く方が向いてるんじゃないかとも同時に思ったりした。
「……まぁいい。どうせ暇だ、少しだけ付き合ってやる」
「嘘!? やった!」
断られると思っていたらしい。
彼女はピョンと小さくジャンプし、垂れるポニーテールと、お世辞にも大きいとは言えない胸を揺らした。それが妙に女の子らしくて、少し可愛いとも思った。
何故か恥ずかしくなって、俺は目を逸らす。
黄昏の空が教室を照らす。
「で、議題は何だ? なるべく早く終わるようにしたいんだが」
俺が問うと、彼女は「うーん」と顎に人差し指を当てた。
「議題は『夢』でしょ? 夢があるあたしと、夢がない……えーっと、古谷君……だっけ?」
俺はこくりと頷いた。
議題についてと、名前についての、両方の意味を含めて。
俺の名前は古谷 栄(フルヤ サカエ)。
ひょんなことから彼女、
「あたしね、森崎 楓! よろしくね」
森崎に巻き込まれた可哀相な高校生である。
久しぶりに、あたしね、から始まった気がした。
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