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ある日、透俐が不定期に行われる生徒会長との話し合いに行って委員会室に不在だったとき、翼はあの時のことがふと頭を過って何の気なしに聞いてみることにした。
「そういえば、この前知らない生徒がここから出てきたんですよ。中には透俐先輩しかいなくて聞いてみたら気にするなって言われて…何だったんでしょう…」
いつの間にか皆作業の手を止めて翼の方を見て話を聞いていた。
「…なんだ翼知らないの?」
意外だというような顔でいってくる優太に翼は疑問符を浮かべる。
「何をですか?」
「あのね、透俐さんの「ちょっと待て」…なんですか朔夜さん」
言葉を遮られた優太はいかにも不機嫌そうに朔夜を睨み付ける。
「翼、お前透俐のこともっと知りたいって言ってたよな」
「え、えぇはい」
「だったら実際見てみるのが一番だろう」
「そうですね。百聞は一見にしかずと言いますし」
理緒も加わって話し出す三人に翼はますます首を傾げる。
「翼、明日授業が終わったらすぐに俺達の教室に来い」
朔夜は真剣な顔をしながら言う。
「透俐のことを一つ、教えてやる」
ガラッ
「!?」
突然扉が開いた音に皆がそちらへ目を向けると、そこには透俐が立っていて吃驚したような顔をしていた。
「どした…皆して…」
「いや、何でもない」
いち早く復活した朔夜が答える。
「会長、なんだって?」
「おぉ、いつも通り頼むってよ。今度どっか遊びにいこうって誘われた。それと今度部屋にゲームでもしに遊びに来いって」
「仕事の話しろ」
いつも通り、疲れたー、と言いながら椅子に倒れ込むようにして座る透俐を横目に翼が朔夜の方を見ると、朔夜も窺うように翼を見ていて目があった。
透俐のことを一つ、教えてやる
朔夜の意図は分からなかったが、透俐のことを知れるという言葉に翼は自然と首を縦に動かしていた。
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