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シンプルながらも高級感のある装飾が施された壁と、柔らかいカーペットが敷かれた廊下を翼は早歩きで進んでいた。
「なんであんな人が風紀委員長なんだ…!」
入学式から抱いていた疑問。翼は、風紀委員とはもっと厳しく、学校の風紀を守るために日夜活動しているものだと思っていた。その委員長ともなればもっと凄い人だと思っていたのに。
「井上先輩の方がよっぽど風紀委員長に相応しいじゃないか!なのに井上先輩も三上先輩もなんで…なんであんな人に…!」
悔しいような、納得していないような複雑な表情を浮かべて翼は廊下を進み続ける。と、少し先に人だかりが出来ていることに気付く。
「どうしたんですか?」
「あ、風紀委員さん!実は…」
一番外側にいた生徒に声を掛けると困った様子で人だかりの中心辺りに目を向けている。
「……すみません!通してください!」
風紀委員です!通してください!と言いながら輪の中心に向かって進んでいく。すると、誰かが言い争う声が聞こえてくる。
「大体お前が!」
「お前だっていつもいつも!」
「やめてください!」
人だかりの原因は二人の生徒の喧嘩だった。翼は慌て間に入る。
「二人共やめてください!」
「なんだよお前!」
「風紀委員です!取り敢えず落ち着いてください!」
「お前に関係ねぇだろ!」
風紀委員だといえば大体の人が話を聞くが、今の二人は怒りで興奮しているためか翼が何を言っても耳を貸そうとしない。
「やめてくださいってば!…くそっ!どうすれば…」
考えてもわからない。正論を言ってもきっと反発してくる。成す術なく立ち尽くす自分が小さく思えた。
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