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「ふざけんな!」
「ふざけてんのはテメェだろ!」
喧嘩は一向に止まらない。あれから翼は何度も止めに入ったがその言葉は届かない。唇を強く噛み締め、握った拳は微かに震えた。
「頑張った、偉い偉い」
不意に頭に手の感触がしたと思ったら、横を通っていった自分の見知った影に翼は目を見開き固まる。そこでようやく自分は頭を撫でられたのだと気付いた。
「い、いんちょ」
「佐原」
呼ばれた方へ振り向くと、これまたよく知る先輩の姿。
「井上先輩…三上先輩…」
「仕事は失敗みたいだな」
「っ!…すみません」
「謝らなくてもいいですよ。失敗は誰にでもありますし」
朔夜の言葉で落ち込んだ翼に理緒は優しく笑いながらフォローを入れる。
「でも、俺が不甲斐ないばかりに先輩方にまで迷惑かけて…喧嘩も止められないなんて…」
「まったくだな」
「朔夜!…大丈夫ですよ。今回は委員長も来ましたし」
そういえば、と翼は透俐の姿を思いだし僅かに眉をよせる。
「あの委員長がよく動きましたね。いつもみたいに今回も面倒臭いとか言って来なさそうなのに」
「お前のあいつに対するイメージってなんだ」
朔夜の問いに翼は、それは勿論、と話始める。
「ろくに仕事もせずに委員会室でお菓子食べてぐだぐたしてるなんであんな人が風紀委員長になったのか理解不能なイメージです」
「あながち間違ってないことが情けないな」
朔夜の返答に理緒は困ったように笑う。
「確かにあいつは置物委員長とか言われてるしろくに仕事しないのも事実だ。だが、あいつは本当にやるべきことはちゃんとやる」
朔夜の言葉に理緒も続ける。
「彼は…透俐は、委員長たるべき人ですよ」
「?」
疑問符を浮かべる翼に朔夜は、見てれば分かる、とだけ言って透俐へと視線を向けた。
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