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「…キャァ!…何するの?離して!嫌っ!」
私は、無理矢理、男に薄暗い路地に引っ張り込まれた…。
「嫌よ…離してぇ!」
一歩も動かないよう踏ん張る…が、一瞬、均衡が崩れ、男に引き寄せられてしまう…。
「静かにしろよ!」
腕を捻られ、痛みと恐怖に、思考が占拠されていく。
「…ちいっと、ばっかり、あんたに、お願いしたいことが、あるんだよな。」
それは、聞き覚えのある声だった。
「…あなた、この間の!」
「覚えていてくれて、光栄ですね、お嬢さん。」
私は、もがきながら、腕を振り払おうと、必死になっていた。
「離して!痛いわ!…離してよ!
「そうは、いかないんだよね。…ねえ、あんた、《時の石》知ってるんだろ?
俺の所に、持って来てよ。
あれ、取って来るように、マスターから、頼まれてんだよね。」
「…自分で、行けばいいでしょ!」
「それは、そうなんだけどな…。
あそこには、守護者の怖いお姉さんが、いるだろう…面倒なんだよ。
その点、あんたは、違う。
あの場に、《時の番人》とその守護者の両方と、一緒にいて、何にもされてないってことは、あんた、関係者だよな?
でも、あんたは、あの姉さんみたいに、俺に危害を加える力はないんだ。
今だって、容易く、俺に、取っ捕まってるものなぁ。」
「…だから、なんなの?
あなたの言うこと、なんでも聞くと…で…も…うっ!ぁああ!!」
「…痛そうだね。手を緩めてあげても、いいけど、条件は、さっきのお願いを、飲んでくれることかな。」
「…い…嫌よ!…あれは、大切なものなのよ…うぅ…あぁ…痛ぁぁい!!」
「…これでも、首を振れる?…持ってきてよ。」
「…はぁはぁ…あれは…どこにでも…持って、こ…れる…物じゃ…ない…。」
「たかが、石っころのために、そんな、必死になるなよ…ダメなら、仕方ないね…。」
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