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男は、ニヤつきながら、思い切り、私の腕を捻り上げた。
「…イヤっあ!…うぅ…ぁああ!!」
骨が、ギシギシいって、いつ折れても不思議じゃなかった…。
痛みで、意識がなくなりそうになった瞬間、耳元で、聞こえた声に、救われた。
「…か弱い女相手に、ちょっと、酷くないかい?そこのお兄さん。」
倒れ込む私の体を、男らしい逞しい腕が、支える。
聞き覚えのある声…悠一?まさか!…悠一なの?
意識を、手放す瞬間に、一抹の期待を胸に、振り仰いだ先にあったのは、なんとなく見覚えは、あるけれど、愛しい悠一では、なかった…。
同時に、私の胸は、私の思いとは、関係なく、大きくトクンと、高鳴り、私の中の誰かが、何かを、呟いた…。
「…返せよ、そこの女。」
「ダメだね。彼女は、お前に連れては、行かせないし、お前の欲しい物も、渡せないな。」
「…お前も、守護者なのか?」
「さて、どうかな?
…俺と一戦、交える気なら受けて立つけど。」
「ムカつくなぁ!」
言い終わらないうちに、男の両手には、小型のナイフが、握られていて、ほんの刹那…瞬きするほどの時間に、投げていた。
チィ~ン
いつの間にか、悠一似の男の手にもナイフがあり、投げつけられたナイフを、弾いていた。
一瞬できた、間合いに、彼は、私を抱いたまま、移動する。
路地脇の物陰に、隠す様に、私を、もたせ掛ける…その時の私は、痛みで、意識をなくし、ぐったりしたままだった。
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