1人が本棚に入れています
本棚に追加
そうそう、転校生が居るんだった。忘れてた。」
ハッと思い出したように転校生を教室に呼んだ。
”可哀そうに。
もっと早く呼んでやれよ。”
御影はそう思ったが口には出さず、心のなかで毒づいた。
ふつうなら転校生が「男」か「女」かとか先生に尋ねるのだろうが、皆あまりに突然のことにそんな質問をした人はいなかった。
転校生は陶磁器のように色素の薄い白い肌、同じく色素の薄い白銀髪、血のような紅い瞳。
服装からして男だろう。
しかもその転校生は暑いにも関わらず、長袖のカッターシャツにネクタイという格好だった。
見ているだけで暑苦しい。
そんな転校生の口元が弧を描いた。
この世の者ではないような気がして。
まるで人形のような。
”気持ち悪い……”
それが俺の、御手洗 千歳に対する第一印象だった。
「は、はじめまして。御手洗 千歳(みたらい ちとせ)です。これから、宜しくお願いします。」
男にしてはかなり高い声だった。
「みんな千歳に質問はないか?」
章仁がクラスの生徒に尋ねる。
すると、一人の女子が
「趣味は?」
と質問した。
「趣味ですか?そうですね……読書ですかね。」
千歳が答えた。
するとあちこちから質問があった。
「彼女は?」
「好きなタイプは?」
「好きな教科は?」
などなど。
その中でも千歳もタジタジだった質問は
「彼氏はいますか?」
という質問だった。
その時の千歳の顔と言ったら。
思い出すだけでも、腹が捩れそうだ。
人形のようで気持ち悪いと言ったが前言撤回、人間味のある面白い奴のようだ。
最初のコメントを投稿しよう!