序章

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そうそう、転校生が居るんだった。忘れてた。」 ハッと思い出したように転校生を教室に呼んだ。 ”可哀そうに。 もっと早く呼んでやれよ。” 御影はそう思ったが口には出さず、心のなかで毒づいた。 ふつうなら転校生が「男」か「女」かとか先生に尋ねるのだろうが、皆あまりに突然のことにそんな質問をした人はいなかった。 転校生は陶磁器のように色素の薄い白い肌、同じく色素の薄い白銀髪、血のような紅い瞳。 服装からして男だろう。 しかもその転校生は暑いにも関わらず、長袖のカッターシャツにネクタイという格好だった。 見ているだけで暑苦しい。 そんな転校生の口元が弧を描いた。 この世の者ではないような気がして。 まるで人形のような。 ”気持ち悪い……” それが俺の、御手洗 千歳に対する第一印象だった。 「は、はじめまして。御手洗 千歳(みたらい ちとせ)です。これから、宜しくお願いします。」 男にしてはかなり高い声だった。 「みんな千歳に質問はないか?」 章仁がクラスの生徒に尋ねる。 すると、一人の女子が 「趣味は?」 と質問した。 「趣味ですか?そうですね……読書ですかね。」 千歳が答えた。 するとあちこちから質問があった。 「彼女は?」 「好きなタイプは?」 「好きな教科は?」 などなど。 その中でも千歳もタジタジだった質問は 「彼氏はいますか?」 という質問だった。 その時の千歳の顔と言ったら。 思い出すだけでも、腹が捩れそうだ。 人形のようで気持ち悪いと言ったが前言撤回、人間味のある面白い奴のようだ。
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